「お母さんが倒れました。すぐ来てください!」
突然の連絡に、頭が真っ白になる。
何を持って行けばいいのか。どこに連絡すればいいのか。病院で何を聞かれるのか。
考えることが多すぎて、何から手をつければよいのか分からなくなることもあるでしょう。
私は医療ソーシャルワーカー(MSW)として、入院した患者さんやご家族の相談を受けています。
その中で感じるのは、突然の入院では、病気のことだけでなく、医療費や仕事、介護、退院後の生活など、さまざまな問題が一度に押し寄せるということです。
すべてを一度に解決する必要はありません。
まずは、今できることから一つずつ整理していきましょう。
この記事では、親が突然入院したときに家族が最初にやるべきことを6つに分けて解説します。
- 入院時に必要な情報を確認する
- 介護サービスを利用している場合は連絡する
- 家族の連絡担当者を決める
- 医師や看護師に確認することを整理する
- 入院に必要な持ち物を準備する
- 医療費や退院後の生活について相談する
今まさに親が入院している方も、いざというときに備えておきたい方も、参考にしてください。
親が突然入院したら、まず何をすればよい?
突然の入院では、すべてを一度に進めようとすると、かえって混乱してしまいます。
まずは、次の3つを意識してください。

① 治療に必要な情報を確認する
普段飲んでいる薬、持病、アレルギー、かかりつけ医など、分かる範囲で情報を集めます。
② 関係する人に連絡する
介護サービスを利用している場合はケアマネジャーに連絡し、家族の中でも病院からの連絡を受ける担当者を決めましょう。
③ 医療費や退院後の生活について相談する
入院が長引く場合、医療費や仕事、介護の調整が必要になることがあります。困ったときは、病院の医療ソーシャルワーカーなどに相談できます。
入院直後から、すべての問題を解決する必要はありません。
まずは目の前のことから整理していきましょう。
親が突然入院したときに家族がやること6選

① 必要な情報を確認する
入院時には、本人の病歴や服薬状況など、さまざまな情報を確認することがあります。
しかし、突然の入院では、家族がすべてを把握しているとは限りません。
まずは、次の情報を確認してみましょう。
- 医療情報: 持病、これまでの病歴、服用している薬、おくすり手帳、かかりつけ医
- 保険情報: 健康保険の資格情報、マイナンバーカードなど
- 介護情報: 介護保険被保険者証、要介護認定の状況、担当ケアマネジャーの連絡先
- 緊急連絡先: 家族や親族の連絡先
- その他: アレルギーの有無、普段の生活状況、利用しているサービスなど
すべての情報がそろっていなくても、焦る必要はありません。
分かる範囲で病院に伝え、確認できていないことは後から補っていきましょう。
特に、普段飲んでいる薬や薬のアレルギーなどは、治療を進めるうえで重要な情報です。
おくすり手帳が見つからない場合でも、薬の名前が分かるものや、普段利用している薬局の情報などが手がかりになることがあります。
なお、保険情報が手元になくても、受診や入院の対応については病院に確認できます。必要な手続きについて案内を受けましょう。
② 介護サービスを利用している場合は、ケアマネジャーに連絡する
親がデイサービスや訪問介護などを利用している場合は、担当のケアマネジャーに入院したことを伝えましょう。
入院すると、これまで利用していた介護サービスの休止や変更が必要になることがあります。
例えば、次のような対応です。
- デイサービスや訪問介護の休止
- 訪問看護など、利用しているサービスの調整
- 福祉用具のレンタルや契約内容の確認
- 退院後の介護サービス再開に向けた準備
サービスの取り扱いは、種類や契約内容によって異なります。
そのため、家族だけで判断して手続きを進めるのではなく、ケアマネジャーに相談することが大切です。
また、退院後に自宅での生活が難しくなる可能性がある場合も、早めに相談しておくとよいでしょう。
入院前と同じ生活に戻れるとは限りません。
退院後の生活を見据えて、必要な準備を少しずつ進めていきましょう。
③ 家族のキーパーソンを決める
入院すると、病院から家族に連絡が入ったり、病状や治療について説明を受けたりすることがあります。
その際、家族の中で連絡を受ける担当者を決めておくと、情報共有がしやすくなります。
医療現場では、こうした役割を担う人を「キーパーソン」と呼ぶことがあります。
例えば、次のような役割です。
- 病院からの連絡を受ける
- 医師や看護師から説明を受ける
- 家族や親族に情報を共有する
- 必要な手続きについて家族間で調整する
ただし、キーパーソンになった人が、すべての判断や手続きを一人で抱え込む必要はありません。
家族で協力しながら、それぞれができることを分担することが大切です。
また、キーパーソンになったからといって、本人に代わってすべての医療行為を決められるわけではありません。本人の意思を尊重し、医療者と相談しながら対応していきます。
誰が担当するか決められない場合は、家族の状況や本人との関係を踏まえて話し合いましょう。
キーパーソンについて詳しく知りたい方は、関連記事も参考にしてください。
【関連記事:キーパーソンとは?医療ソーシャルワーカーが解説】
④ 病院説明を受ける準備をする
「説明の際は、メモを用意し、分からないことを確認しましょう」
入院すると、病状や治療方針について説明を受けることがあります。
突然の出来事に動揺していると、説明を聞いても内容が頭に入らなかったり、後から「聞いておけばよかった」と感じたりすることもあります。
そんなときは、確認したいことをメモしておくと役立ちます。
例えば、次のような内容です。
- 現在の病状や、治療が必要になった理由
- 今後予定されている検査や治療
- 現時点で予想される入院期間
- 食事や歩行など、生活上の制限
- 家族が準備しておくこと
- 今後、家族が説明を受ける予定
すべてを一度に理解しようとしなくても大丈夫です。
分からないことがあれば、その場で質問したり、改めて説明をお願いしたりして構いません。
また、病状によっては、治療の選択や今後の療養について家族が考える場面もあります。
例えば、本人が自分の希望を伝えられない場合、これまで本人が話していたことや大切にしていた価値観が、話し合いの手がかりになることがあります。
ただし、家族だけで結論を出そうとする必要はありません。
医師や看護師に、治療の目的や見通し、選択肢について確認しながら考えていきましょう。
⑤ 入院に必要な持ち物を準備する

入院時には、手続きに必要なものや、入院生活で使う日用品を準備します。
ただし、必要な持ち物は病院や入院形態によって異なります。
まずは病院から案内された内容を確認しましょう。
一般的には、次のようなものがあります。
手続きや情報確認に必要なもの
- 健康保険の資格情報が分かるもの
- おくすり手帳
- 病院から指定された書類
- 印鑑など、必要と案内されたもの
入院生活で使用するもの
- パジャマや着替え
- タオル類
- 歯ブラシなどの洗面用具
- 滑りにくく、着脱しやすい履物
- 必要に応じて眼鏡や補聴器など
病院によっては、パジャマやタオル、日用品、おむつなどのレンタルサービスを利用できる場合があります。
入院直後は、必要なものをすべてそろえようとしなくても大丈夫です。
病院の案内を確認しながら、必要なものを順番に準備していきましょう。
⑥ 医療費や退院後の生活について相談する

入院すると、病気や治療のことだけでなく、お金や仕事、家族の生活についても考えなければならなくなることがあります。
特に、入院が長引く場合や、退院後に介護が必要になる場合は、早い段階から情報を集めておくと安心です。
確認しておきたいことは、次のとおりです。
- 入院費や食事代など、どのような費用がかかるか
- 高額療養費制度など、利用できる制度があるか
- 医療保険や生命保険の給付対象になるか
- 退院後、自宅で生活できる見込みがあるか
- 介護サービスや施設の利用が必要になるか
- 家族の仕事や家事、介護をどのように調整するか
医療費については、医療機関の窓口や加入している健康保険の保険者に確認できます。
高額療養費制度などを利用できる場合もありますが、対象となる費用や手続きは状況によって異なります。
入院費の支払いが心配な場合は、早めに相談しておきましょう。
また、退院後の生活について不安がある場合は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談することもできます。
医療ソーシャルワーカーは、医療費や利用できる制度、退院後の生活、介護サービスなどについて、患者さんやご家族と一緒に考える専門職です。
「何を相談すればよいのか分からない」という段階でも構いません。
不安に感じていることを、そのまま伝えてみてください。
医療ソーシャルワーカーから伝えたいこと
突然の入院では、家族が短い時間の中で、さまざまなことを考えなければならない場合があります。
病状への不安に加え、仕事をどうするか、介護を続けられるか、医療費を支払えるかなど、心配事は一つではありません。
医療ソーシャルワーカーとして相談を受ける中でも、家族が複数の問題を抱え、何から相談すればよいのか分からなくなっている場面があります。
そんなときに大切なのは、すべてを家族だけで解決しようとしないことです。
病状については医師や看護師に、医療費や退院後の生活については医療ソーシャルワーカーに、介護サービスについてはケアマネジャーに相談できます。
相談先が分からない場合は、まず病院のスタッフに尋ねてみてください。
また、本人が自分の希望を伝えられる状態であれば、本人の考えを確認することも大切です。
家族がよかれと思って決めたことでも、本人の希望とは異なる場合があります。
本人の思いを尊重しながら、家族ができることを一つずつ整理していきましょう。
親が元気なうちに話しておきたいこと
ここまでは、親が突然入院したときに家族が最初にやるべきことを紹介しました。
一方で、元気なうちに少しだけ話しておくことで、いざというときに役立つ情報もあります。
例えば、次のようなことです。
- 持病や服用している薬、かかりつけ医
- 健康保険や介護保険に関する書類の保管場所
- 医療保険や生命保険の加入状況
- 緊急時に連絡してほしい家族
- 介護が必要になった場合、どのような生活を希望するか
- 病気が重くなったとき、どのような治療や療養を望むか
特に、治療や療養についての話し合いは、切り出しにくいテーマかもしれません。
「まだ元気なのに、そんな話をする必要があるの?」と思われることもあるでしょう。
無理にすべてを聞き出す必要はありません。
例えば、身近な話題から始めてもよいと思います。
「もし入院することになったら、誰に連絡してほしい?」
「家で生活するのが難しくなったら、どうしたい?」
こうした話題から、少しずつ本人の考えを知ることができます。
治療や療養についても、本人の意思は状況によって変わることがあります。一度話したら終わりではなく、必要に応じて話し合いを重ねていくことが大切です。
また、通帳や保険関係の書類などについては、保管場所や契約先を確認しておくと、必要なときに探しやすくなります。
暗証番号などの重要な情報については、安全性や本人の意向に配慮して管理しましょう。
全部を一度に確認する必要はありません。
できることから始めてみてください。
まとめ|親が突然入院しても、すべてを一度に解決しなくてよい
親が突然入院すると、病気への不安だけでなく、医療費や仕事、介護、退院後の生活など、さまざまな問題が一度に押し寄せます。
そんなときは、次の6つを意識してみてください。
- 必要な情報を確認する
- 介護サービスを利用している場合は連絡する
- 家族のキーパーソンを決める
- 医師や看護師に確認することを整理する
- 入院に必要な持ち物を準備する
- 医療費や退院後の生活について相談する
すべてを一度に進める必要はありません。
分からないことや不安なことがあれば、病院のスタッフや医療ソーシャルワーカーなどに相談しながら、一つずつ整理していきましょう。
そして、少し落ち着いたら、親がどのような生活を望んでいるのか、どのような治療や支援を希望しているのかを話し合う機会をつくってみてください。
突然の入院に備えることは、家族の負担を減らすだけでなく、本人の希望を大切にすることにもつながります。
この記事が、いざというときに何をすればよいのかを考えるきっかけになれば幸いです。
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