医療ソーシャルワーカーの現場で見えた介護予防の7つのポイント
「親には長く元気でいてほしい」
親が病気やケガで介護が必要な状況になると、家族は体力的・精神的・金銭的に負担が大きく生じます。
医療ソーシャルワーカーという仕事柄、「昨日までは元気だったのに」という形で、急に介護が必要になったケースは多々見てきました。
その中で多かった疾患は「脳卒中・骨折・認知症」。
もちろん、すべての病気やケガを防げるわけではありません。
しかし日々の注意で避けられる要因、起きる可能性を下げられる要因もあります。
今回は医療ソーシャルワーカーとして働いている中で見えてきた、「親に元気でいてもらうために、家族ができること」について解説していきたいと思います。
結論
親に元気でいてもらうためには、次の7つが重要です。
✅ 転倒を防ぐ住環境を整える
✅ 毎日身体を動かす
✅ 血圧や生活習慣病を管理する
✅ バランスの良い食事を続ける
✅ 人とのつながりを保つ
✅ 目・耳・口の衰えを放置しない
✅ 「最近変わった」を早めに受診につなげる
なぜ介護は突然始まるのか
ある日突然、始まる介護
病院で働く中で、介護が必要になるきっかけとして多いのが次の3つです。
- 脳卒中
- 転倒による骨折
- 認知症
について説明します。
① 転倒・骨折を防ぐ
骨折の多くは転倒が原因です。
それでは「どこで」転倒することが多いのでしょうか。
その多くは「自宅での転倒」。屋外での転倒を遥かに上回ります。
自宅の転倒場所として多いのは、
・玄関
・階段
・ベランダ
・浴室
・トイレ
家の中は「慣れているから安心」という意識が強いのでしょうか。
実際に転倒の原因となった例としては、
・スリッパで躓いた
・延長コードに引っかかった
・床と絨毯の僅かな段差に躓いた
・扉の敷居に躓いた
などがあります。
転倒の共通点は「段差」です。
大きな段差は注意して越えようとしますが、小さな段差ほど油断しやすくなります。
高齢になると反射神経も低下するため、気づいたときには受け身も取れず、転倒してしまうケースも少なくありません。
転倒を予防する方法
・手すりを設置する
・1階に居室を移し、階段を使わずに生活が出来るようにする
・高い段差は小分けにする(踏み台など)
・高さが変わるところに目印をつける
・床に物を置かない
・絨毯を敷かない
・靴下は滑り止めが付いたものを履く
手すりや段差の解消は、体力や筋力に合わせて検討しましょう。
毎日何度も通る場所は、「100回移動して100回安全」と言える環境が理想です。
2階への階段の上り下りが負担になってきたら、1階へ居室を移すことも転倒予防につながります。家屋環境の兼ね合いで難しい家庭も多いため、選択肢の一つとして考えてみましょう。
「高さが変わるところに目印・床に物を置かない・絨毯を敷かない・滑り止めの靴下」などは、今日からでも出来る準備です。
「えっ、こんな段差で転ぶの?」と思うかもしれません。
「はい、転ぶんです」。
私は医療ソーシャルワーカーの現場で、このような転倒をきっかけに入院や介護が始まるケースを何度も見てきました。だからこそ、小さな段差や生活環境を見直すことを、介護予防の第一歩として強く勧めたいと考えています。

② 歩くことが最大の予防になる
高齢になると筋力は中々つきません。
加えて、せっかくつけた筋力は簡単に落ちてしまいます。
1か月も寝たきりでいると、驚くぐらいに足腰が弱ります。
これを予防するのに最適なのは「歩く」ことです。
過去にこのような相談を受けました。
「病院を退院した時は歩けていたんです!退院後、母が転倒しないようになるべく部屋にいて貰いました。外出も控えさせました。退院から1か月経ったのですが、また母が歩けなくなった。病気だと思うから診察してください!」
検査の結果、新たな病気は見つかりませんでした。
原因は運動不足による「筋力低下」。転倒を恐れた結果、歩く機会が減少。病院で獲得した筋力や体力が失われてしまったのです。
能力を維持するためには運動習慣が必須です。診察後に面談した際、介護保険での訪問リハビリ・通所系サービス、家族付き添いでの近所の散歩などを提案しました。
③ 脳卒中を予防する生活習慣
脳卒中の最大の危険因子は高血圧です。日本人を対象とした研究では、脳卒中全体の約4人に1人(約26%)が高血圧に関連していると報告されています。その他にも、糖尿病や脂質異常症、喫煙、心房細動などが発症リスクを高めることが分かっています。
脳卒中の主な危険因子
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 塩分の多い食事
- 喫煙
- 過度の飲酒
医師は本人・家族に対して、これらを控える・中止するようによく話をします。
特に血圧コントロールは非常に大切です。
入院中は安定していても、自宅に帰ると大幅に血圧が上がる方は珍しくありません。塩分過多、過食、酒、たばこ、急激な温度変化などの影響が強いと言われています。
自宅退院後も毎日決まった時間に血圧を測りましょう。記録したノートを主治医に見てもらい、生活習慣の見直しや、薬の調整について相談してください。要因が食事にある場合、栄養士などの専門家にアドバイスを受けることも一考です。
④ 認知症、精神疾患:人とのつながりが大切
仕事を辞めて誰とも話さなくなった男性が、急激に認知機能を落としてしまう。
よく聞くエピソードですが、珍しくはありません。
身体能力に限らず、認知能力も使わなければ低下します。
人と話す機会が極端に失われると、会話・コミュニケーション・思考能力が低下します。それが引き金になり、うつ病などに繋がるケースも実際にあります。
- 外出
- 趣味
- 会話
- 地域活動
- デイサービス
認知機能を保つためには、社会との「つながり」が必要です。
自分の両親が毎日引きこもっており、誰とも会話していない状況であれば黄色信号かもしれません。
認知機能はいったん落ちてしまうと、生活全般が困難になります。
目に見えにくい部分ではありますが、ここにも注意して欲しいと思います。
⑤ 見逃しやすい「老化のサイン」、家族が気づきたい変化

- 視力低下、聴力低下
- 排泄トラブル
- 皮膚トラブル
- 最近転びやすい
- 外出が減った、会話が減った
- 食事量が減った
- 同じ話が増えた、物忘れなど
病気と診断されていないけど。
日々の生活の中で気づきにくいけど。
介護が始まる前、思い起こせば、親に何かしらのサインが出ていた…ということは多々あります。
例:排泄トラブル。
トイレに間に合わない。パンツが濡れてしまう。臭いや感触が気になってしまい、外出するのが精神的に辛い。引きこもりがちになり、筋力や認知面が低下。物忘れがひどくなり、自宅内で転倒し骨折した。
始めは排泄だけの問題でしたが、経過とともに多くの課題が生じてしまったケースです。
履くタイプのオムツ、尿取りパッド、失禁用の布パンツの使用。泌尿器科で相談。
初期段階で取れる選択肢は複数あります。問題が長期化・重症化する前に対処ができれば、その後の問題は起きなかった可能性があります。
「もっと早く気づいていれば防げたかもしれない」というケースは少なくありません。
突然始まった介護の中には、振り返ると小さな変化が積み重なった結果という場合があります。こうしたサインを家族が見逃さず、早めに対応することが、親が元気に暮らし続けるための重要なポイントになります。
今日からできるチェックリスト

まとめ
親に元気でいてもらうために大切なのは、「特別なこと」ではありません。
毎日の生活の中で、
- 転ばない環境を整える
- 身体を動かす
- 持病を管理する
- 人とのつながりを保つ
- 小さな変化に早く気づく
こうした積み重ねが、介護予防につながります。
介護予防は、特別なことではなく毎日の小さな積み重ねから始まります。今日できることを一つずつ続けることが、親が元気に暮らし続ける未来につながります。
小さな積み重ねを大事に、自分と親の未来を守っていきましょう。
「介護予防は、親だけでなく家族の生活を守る考え方です。」




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