親が転びやすくなった、入院をきっかけに自宅での生活が難しくなった、認知症の症状が気になり始めた。
このようなとき、「介護保険を申請したほうがよいのだろうか」「どこに相談すればよいのだろう」と悩む方もいるのではないでしょうか。
介護保険を利用するためには、原則として市区町村から要支援・要介護の認定を受ける必要があります。
この記事では、医療ソーシャルワーカー(MSW)として医療・介護に関する相談を受けてきた経験を踏まえ、親の介護が必要になったときに知っておきたい介護保険の申請方法を解説します。
この記事の結論
親の介護が必要になったら、まずは次の3つを確認しましょう。
- 相談先: 市区町村の介護保険担当窓口、または地域包括支援センター
- 申請の準備: 介護保険被保険者証や主治医の情報など、自治体が指定するものを確認する
- 申請後: 認定調査と主治医意見書をもとに審査が行われ、認定結果が通知される
介護保険の申請は、本人だけでなく家族などが手続きを代行できる場合もあります。
また、認定結果が出るまでには時間がかかることがあります。退院後の生活や自宅での介護に不安がある場合は、結果を待たずに相談を始めることが大切です。
1.介護保険を申請できるのはどんな人?
介護保険の認定を受けられる人は、年齢などによって条件が異なります。
65歳以上の方
65歳以上の方は、介護が必要な状態になった場合、原因となった病気にかかわらず要介護認定を申請できます。
例えば、次のような場合です。
- 足腰が弱くなり、歩行や立ち上がりが難しくなった
- 認知症の症状があり、日常生活に支援が必要になった
- 入院後に体力が低下し、退院後の生活に不安がある
- 入浴や着替え、食事などに介助が必要になった
「まだ家の中を歩けるから」「家族が介護できているから」といって、申請をためらう必要はありません。
介護が必要になりそうだと感じた段階で、まずは相談してみましょう。
40歳以上65歳未満の方
40歳以上65歳未満の方は、医療保険に加入していることに加え、介護保険で定められた特定疾病が原因で要介護・要支援状態になった場合に対象となります。
特定疾病には、がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの)、初老期における認知症、脳血管疾患、関節リウマチなどがあります。
40歳以上65歳未満の場合は、65歳以上の方と対象条件が異なるため、該当するかどうかを市区町村の窓口に確認しましょう。
2.介護保険の申請はどこでする?
介護保険の申請先は、原則として本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口です。
申請方法がわからない場合や、家族だけでは手続きが難しい場合は、地域包括支援センターに相談する方法もあります。
市区町村の介護保険担当窓口
介護保険の申請手続きを行う窓口です。
申請書の入手方法や提出方法、必要書類などを確認できます。
自治体によっては、郵送やオンラインで申請できる場合もあります。窓口に行く前に、自治体のホームページなどで確認しておくと安心です。
地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護に関する相談を受け付ける公的な相談機関です。
例えば、次のような悩みを相談できます。
- 介護保険を申請したほうがよいかわからない
- 親の認知症が心配になってきた
- 家族だけで介護を続けることが難しい
- どのような介護サービスを利用できるのか知りたい
地域包括支援センターは、担当する地域が決まっています。親が住んでいる住所をもとに、担当のセンターを確認しましょう。
3.介護保険の申請に必要なもの
申請時に必要な書類や情報は、自治体や本人の状況によって異なります。
- 介護保険被保険者証(65歳以上の方)
- 医療保険の加入状況を確認できるもの(40歳以上65歳未満の方)
- 主治医の氏名、医療機関名、連絡先など
- 本人の住所や連絡先などの基本情報
- マイナンバーや本人確認書類(自治体の案内に応じて準備)
40歳以上65歳未満の方については、医療保険の加入状況の確認が必要です。従来の健康保険証ではなく、マイナ保険証や資格確認書などを用いる場合もあるため、必要なものを自治体に確認しましょう。
介護保険被保険者証を紛失している場合や、何を準備すればよいかわからない場合も、まずは窓口に相談してください。
主治医の情報も確認しておきましょう
介護保険の認定では、主治医が作成する「主治医意見書」が重要な資料になります。
申請時に主治医の氏名や医療機関名などを記載する必要があります。
普段から通院している医療機関へ、事前に主事意見書の依頼をしておくとスムーズです。
4.介護保険の申請から認定までの流れ

介護保険の申請後は、認定調査や主治医意見書の作成などを経て、審査・判定が行われます。
STEP1.市区町村などの窓口で申請する
申請書を提出します。
本人や家族が申請するほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などが申請手続きを代行できる場合もあります。
STEP2.認定調査を受ける
市区町村の職員などが本人の心身の状態や日常生活の状況を確認します。
調査では、歩行や立ち上がり、食事、入浴、排せつ、認知機能など、日常生活でどの程度の支援が必要かを確認します。
STEP3.主治医意見書が作成される
病気や心身の状態などについて、かかりつけの医師が意見書を作成します。
STEP4.審査・判定が行われる
認定調査の結果と主治医意見書などをもとに、コンピューターによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定が行われます。
STEP5.認定結果が通知される
市区町村から認定結果が通知されます。
認定結果は、要支援1・2、要介護1~5、または非該当などに分かれます。
認定結果によって、利用できる介護保険サービスや支給限度額などが異なります。
5.介護保険の認定にはどれくらい時間がかかる?
要介護認定は、原則として申請から30日以内に行うこととされています。
ただし、認定調査の日程調整や主治医意見書の作成、審査の状況などによって、結果の通知が遅れる場合があります。
実際の相談現場では、申請から1ヵ月半程度で認定が降りることが多いです。
退院後の生活や自宅での介護に不安がある場合は、認定結果が出てから動き始めるのではなく、申請と並行して相談を進めることも大切です。
認定結果が遅れている場合は?
予定より結果が遅れている場合は、まず市区町村の介護保険担当窓口に状況を確認しましょう。
認定調査がまだ行われていないのか、主治医意見書の作成を待っているのかなど、状況によって対応が異なります。
必要に応じて、自治体から医療機関などへの確認を行ってもらいましょう。
6.認定結果が出る前でも介護サービスは利用できる?
「認定結果が届くまでは、介護サービスを利用できない」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、状況によっては、認定結果が出る前から暫定的なケアプランを作成してサービスを利用できる場合があります。
例えば、次のようなケースです。
- 入院中の親が退院する予定だが、自宅での生活に介助が必要
- 認定結果を待っている間にも、介護サービスが必要
- 家族だけでの介護が難しく、早急に支援を調整したい
認定前にサービスを利用したい場合は、自己判断で契約を進めず、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。
退院が迫っている場合は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談することも有効です。
7.MSWの現場から:申請後に気をつけたい3つのこと
介護保険は、申請すればすべての手続きが終わるわけではありません。申請後も、状況に応じて確認しておきたいことがあります。
① 入院・退院などで本人の居場所が変わった場合
申請時には自宅で生活していても、その後に入院したり、退院後の生活場所が変わったりする場合があります。
認定調査を受ける場所や日程の調整が必要になることもあるため、状況が変わった場合は市区町村の担当窓口に連絡しましょう。
② 認定調査では普段の生活の様子を伝える
認定調査では、本人ができることだけでなく、日常生活でどのような支援が必要なのかを具体的に伝えることが大切です。
例えば、次のような内容です。
- 一人で歩けるが、転倒することがある
- 食事はできるが、準備や見守りが必要
- 物忘れがあり、薬の管理を一人ですることが難しい
- 入浴はできるが、家族の見守りや介助が必要
普段困っていることを事前にメモしておくと、調査時に伝えやすくなります。
できないことを大げさに伝える必要はありませんが、調査当日だけの様子で判断されないよう、普段の生活状況を具体的に説明しましょう。
③ 認定結果が届いた後の手続きも確認する
認定結果が届いたら、結果を確認して終わりではありません。
要介護認定を受けた方が在宅で介護サービスを利用する場合は、ケアマネジャーなどに相談し、ケアプランを作成してサービス利用を調整します。
要支援1・2の方は、地域包括支援センターなどが介護予防サービスの利用を支援します。
施設への入所を希望する場合は、施設の種類や本人の状態に応じて、利用条件や申込方法を確認する必要があります。
認定結果を踏まえて、どのような支援を受けられるのか相談しましょう。
まとめ:親の介護が必要になったら、まずは相談から始めよう
親の介護が必要になったとき、何から始めればよいかわからず、不安になることもあるでしょう。
介護保険を利用するための基本的な流れは、次のとおりです。
- 市区町村の介護保険担当窓口や地域包括支援センターに相談する
- 必要なものを確認して申請する
- 認定調査を受け、主治医意見書をもとに審査・判定を受ける
- 認定結果を確認し、ケアマネジャーなどとサービス利用を調整する
申請から認定までには時間がかかる場合があります。介護の負担が大きくなってからではなく、困り始めた段階で相談することが大切です。
一人で抱え込まず、地域包括支援センターや医療機関の相談窓口などを活用してください。
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介護保険の申請だけでなく、認定調査で確認される内容や、認定後にどのように介護サービスを利用するのかも知っておくと、今後の準備に役立ちます。


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