「生活保護を受けたいけれど、自分が対象になるのかわからない」
「家族に知られたり、迷惑をかけたりするのが心配」
「働いている場合や、年金を受給している場合でも申請できるの?」
生活に困っていても、このような不安から相談をためらう方は少なくありません。
生活保護は、収入がない人だけが利用する制度ではありません。働いている人や年金を受給している人でも、世帯の状況によって利用できる場合があります。
また、持ち家がある場合や、家族から援助を受けられない場合でも、申請できる可能性があります。
この記事では、医療ソーシャルワーカー(MSW)として病院で生活に困っている方の相談を受けてきた経験を踏まえ、生活保護の受給条件、資産や車の扱い、扶養照会、申請方法について、初めての方にもわかりやすく解説します。
生活に困っている場合は、制度を自己判断で諦めず、まず相談することが大切です。
結論|生活保護を検討するときに知っておきたい7つのこと
生活保護を考えている方に、まず知っておいてほしいポイントは次の7つです。
- 生活保護は、収入が最低生活費に満たない場合などに利用できる制度
- 働いていても、年金を受給していても対象になる場合がある
- 預貯金や資産は確認されるが、持ち家があるだけで申請できないわけではない
- 車の保有は原則として認められないが、例外もある
- 親族から援助を受けられなくても、申請を諦める必要はない
- 原則として世帯単位で判断されるため、同居家族の収入や資産も確認される
- 必要な書類がそろっていなくても申請できる
生活保護を受けられるかどうかは、収入だけで決まるわけではありません。世帯の状況や資産などを確認したうえで判断されます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
生活保護は「不足分を補う制度」
生活保護は、生活に困っている人に対して、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。
受給できるかどうかを判断する際には、世帯の収入と、国の基準に基づいて計算される「最低生活費」を比較します。
最低生活費は、年齢・世帯人数・住んでいる地域・必要な扶助などによって異なります。
例えば、ある世帯の最低生活費が月15万円で、収入が月10万円の場合、不足する5万円が保護費として支給される可能性があります。
※これは仕組みを説明するための単純な例です。実際の支給額は、収入の認定方法や世帯の状況によって異なります。
① 収入があっても生活保護を利用できる場合がある

次のような場合でも、生活保護の対象になることがあります。
- パートやアルバイトで働いている
- 年金を受給している
- 障害年金を受給している
- 病気や障害により、十分に働くことが難しい
「働いているから生活保護は受けられない」「年金があるから申請できない」と決めつける必要はありません。
世帯の収入が最低生活費に満たない場合などは、生活保護を利用できる可能性があります。
② 預貯金・持ち家・NISAなどの資産はどうなる?
生活保護を利用する場合、生活に活用できる資産があるかどうかも確認されます。
主に確認されるものには、次のようなものがあります。
- 預貯金
- 土地や建物
- 株式や投資信託などの有価証券
- 生命保険など
生活に利用できる資産がある場合は、その活用を求められることがあります。
ただし、持ち家があるからといって、必ず生活保護を受けられないわけではありません。
現在住んでいる家については、資産価値や世帯の状況などによって、保有が認められる場合があります。
また、NISA口座で保有している株式や投資信託などは、資産としてカウントされます。
非課税制度だからといって、生活保護の資産確認から除外されるわけではありません。
③ 車を持っていても生活保護を申請できる?
生活保護では、自動車の保有は原則として認められていません。
車には、ガソリン代、保険料、税金、車検費用などの維持費がかかるためです。
車に対する税金を、生活保護で払うのは制度的に矛盾していますよね。
一方で、一定の条件を満たす場合には、例外的に保有が認められることがあります。
例えば、次のような事情です。
- 公共交通機関の利用が著しく困難な地域で、通院に車が必要
- 障害のある人の通勤などに車が必要
- 就労や自立のために車が必要で、一定の条件を満たしている
ただし、通院や通勤に必要という理由だけで、必ず保有が認められるわけではありません。車の必要性や維持費、ほかの移動手段の有無などが確認されます。
④ 扶養照会で家族に知られる?援助を受けなければならない?
生活保護の申請をためらう理由の一つに、親や兄弟姉妹など、家族への影響があります。
申請すると、福祉事務所から親族に対して、援助が可能かどうかを確認する「扶養照会」が行われる場合があります。
例えば、次のような事情がある場合は、扶養照会を行わないことがあります。
- 親族からDVや虐待を受けたことがある
- 親や兄弟姉妹と10年程度にわたって音信不通になっている
- 借金や相続などのトラブルがあり、親族との関係が著しく悪い
- 親族自身が生活保護を受けている、長期入院中であるなど、援助が期待できない
福祉事務所が、本人の生活歴や親族との関係などを確認したうえで判断します。
家族に知られることが不安な場合や、過去のトラブルによって連絡を避けたい場合は、申請時にその事情を具体的に伝えましょう。
⑤ 生活保護は世帯単位で判断される
生活保護は、原則として世帯単位で判断されます。
そのため、同居している家族がいる場合は、本人だけでなく、世帯全体の収入や資産などが確認されます。
例えば、親と同居している無収入の成人の子どもが、本人だけの生活保護を希望する場合、親の収入や世帯の状況が審査に関係することがあります。
また、別居している親族の収入が、原則としてそのまま本人の世帯収入に加算されるわけではありません。親族から実際に仕送りなどの援助を受けている場合は、その援助が収入として確認されます。
「同居しているから無理」「別居すれば受給できる」と自己判断せず、家族の状況を福祉事務所に説明して相談しましょう。
⑥ 生活保護の申請から支給までの流れ

1.福祉事務所に相談する
相談窓口は、現在住んでいる地域を担当する福祉事務所の生活保護担当です。
生活の状況や収入・資産・困っていることなどを伝え、制度の説明を受けます。
申請する意思がある場合は、そのことをはっきり伝えましょう。
2.生活保護を申請する
預貯金通帳、給与明細、年金額がわかる書類など、収入や資産を確認する資料を求められることがあります。
ただし、必要な書類がすべてそろっていなくても申請できます。
書類を準備できないことを理由に、相談や申請を先延ばしにする必要はありません。
3.生活状況や収入・資産の調査を受ける
申請後、福祉事務所による調査が行われます。
- 家庭訪問などによる生活状況の確認
- 預貯金、不動産、保険などの資産調査
- 給与や年金などの収入調査
- 必要に応じた親族への扶養照会
- ほかの社会保障制度を利用できるかどうかの確認
調査では、現在の生活状況や困っていることを、できるだけ具体的に伝えることが大切です。
4.生活保護の決定通知を受け取る
生活保護を開始するかどうかは、申請後の調査を踏まえて判断されます。
決定の通知は、原則として申請から14日以内です。特別な理由がある場合は、最長30日以内となることがあります。
生活保護が開始された場合は、世帯の状況に応じて保護費が支給されます。
申請が認められなかった場合は?
生活保護が開始されなかった場合は、決定通知に記載された理由を確認しましょう。
そのうえで、判断に疑問がある場合や、生活が困窮している状況が続いている場合は、福祉事務所に説明を求めたり、利用できるほかの制度について相談したりすることが大切です。
生活保護の決定に対して不服がある場合には、法律に基づく審査請求などの手続きもあります。
手元にお金が残っていても申請できる?
「貯金が少し残っているけれど、申請できるのだろうか」と相談されることがあります。
預貯金などの資産は審査の対象になりますが、所持金の金額だけで一律に受給の可否が決まるわけではありません。
重要なのは、世帯の収入や資産、最低生活費、今後の生活の見通しなどを踏まえて判断されるということです。
「もう少し貯金が減ってから相談しよう」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、生活が苦しくなっている場合は、貯金が尽きるまで待つ必要はありません。早めに相談することで、生活保護以外の制度も含めて、利用できる支援を検討できる場合があります。
MSWとして伝えたいこと|生活が苦しくなったら早めに相談を
「家族に迷惑をかけたくない」
「まだ自分で何とかできる」
「生活保護を受けるのは申し訳ない」
と考え、相談が遅れてしまう方がいます。
病気や障害によって働くことが難しくなったり、入院費や生活費の負担が大きくなったりすると、本人だけで解決することが難しい場合もあります。
生活保護は、生活を立て直すための制度の一つです。
生活保護以外にも、年金、医療費の助成、生活困窮者への相談支援など、状況に応じて利用できる制度があります。
生活が苦しいと感じたら、一人で抱え込まず、福祉事務所や身近な相談窓口に相談してみてください。
まとめ|生活保護の申請を迷っている方へ
生活保護について、覚えておきたいポイントをまとめます。
- 収入があっても、最低生活費に満たない場合などは利用できる可能性がある
- 持ち家や車がある場合も、事情によって判断が異なる
- 親族から援助を受けられなくても、申請を諦める必要はない
- 原則として世帯単位で判断されるため、同居家族の状況も確認される
- 必要な書類がそろっていなくても申請できる
- 生活が苦しくなったら、貯金が尽きる前に相談することが大切
生活保護を受けられるかどうかは、個々の状況によって異なります。
まずは現在の生活状況を整理し、福祉事務所に相談してみましょう。
相談することは、決して恥ずかしいことではありません。生活を立て直すための一歩です。
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参考情報
※生活保護の利用可否や資産の扱いは、個別の状況によって異なります。具体的な判断については、福祉事務所にご相談ください。


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